ムジナ博士・上遠岳彦先生

アナグマ 撮影:上遠岳彦
タヌキ 撮影:上遠岳彦

2020年2月14日

ICUに暮らすムジナ

ムジナって何? その正体はニホンアナグマ。ICU(国際基督教大学)キャンパスで子育てが確認されるほど、身近な動物です。
ICUでムジナが初めて観察されたのは2007年。巣穴も見つかりましたが長く使われたものではなかったので、どこかからやってきて住み着いたと考えられます。

ムジナは一夫多妻。子育てする複数メスのテリトリーを1頭の雄が行き来し、メス同士はよく喧嘩します。

ムジナの毛皮は大人の服を子供が着ているように皮がだぶだぶしていて、噛みつかれたり攻撃を受けたりしても身体そのものにダメージを受けにくいのです。
それから穴掘りが上手。多い時には20個もの巣穴を掘って子育てします。時に子供をくわえてどこかに姿を消し、大きくなった子を連れて再び現れることもあります。1箇所に長く留まると寄生虫が発生しやすく、それを防ぐためだと考えられています。

大きな巣穴は10~20mにも及び、構造も複雑です。ムジナが掘った巣穴をタヌキやアライグマが使うこともあります。これが「同じ穴のムジナ」のゆえんです。子育て中のタヌキに攻撃されて、ムジナが巣穴から退散するなんてことも…ムジナが掘った穴なのに。
穴を掘るのは静かな人通りの少ないところばかりではなく、駐車場の真ん中に掘り始めたり、ICUに隣接する住宅の庭を5~6mも掘り返したという報告もあります。

本来ムジナは夜行性、冬の間は冬眠しますが、ICUでは冬に出歩く姿が確認されています。それでも秋になると冬に備えて1.5倍ほど、だぶだぶの皮が張り詰めるくらい太ります。冬の間は主食のミミズがいなくなることもあり、あまり食べなくなります。

温暖化はムジナに直接的な影響は少ないかもしれませんが、エサの昆虫は深刻な影響を受けると考えられており、それが問題です。

差し迫ってはいませんが、ムジナも東京都の絶滅危惧種です。23区内では目撃情報が少しあるのみで、都市部に一番近い繁殖地はICUキャンパスです。つまりここがムジナ生息地のへりです。

1960年代、三鷹以降の都心ではタヌキも一度いなくなりました。それが70年代に入って少しずつ戻りました。現在タヌキは皇居にもいるし、丸の内でも目撃情報があります。ムジナは繁殖するのに巣穴が必要で、ICUぐらいの広さがないと難しいのです。ハケの斜面が開発されにくかったことが、ムジナの生息につながっています。

国際基督教大学

上遠岳彦先生

担当:北、野口、土肥、横田